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2018年8月12日 (日)

生麦事件ー4 敵との遭遇

英国公使館の医官ウィリスは事件現場へ急行している。
同じく「遠い崖」より抜粋する。
「先週の日曜日のことですが、ジェンキンズがあわてて駈け込んできて、さあ医療器具をまとめろ、リチャードソンが殺され、マーシャルとクラークは深手を負い、ボロデール夫人は疲労のあまり、半死半生の状態でいまかえってきたところだと叫びました。私は大急ぎで必要な器具を鞄に詰め、神奈川をめざして馬を飛ばしましたが、そこに着くまでに横浜に住む三人のひとが追いついて来ました。私たち四人はあるときは全力で、あるときは速度を落としながら、薩摩藩主の家来の長い行列の脇を走り抜けてゆきました。あるときなど、ひとりの家来が刀の柄(つか)に手をかけ、わたしたちに襲いかかる構えをみせました。それを見て、わたしたちといっしょに馬を走らせていたボイルという男が拳銃をふりかざし、頭をぶち抜いてやるぞという格好をしました。その家来はおじ気づいたのか、けっきょく刀を抜きませんでした。もちろんボイルが発砲していたら、わたしたちはいっせいに攻撃をうけ、おそらくみな殺しにされていたでしょう。もっとも、わたしたちも右手で手綱をとりながら、左手で撃鉄をあげたままの拳銃をにぎっていたのですから、かならず何人かの家来を打ち殺していたでしょうが、私はこの行列がリチャードソンを殺害した一行の一部であったと、今でも信じています。」
(「旅立ち 遠い崖ーアーネスト・サトウ日記抄1」」(萩原延壽著、朝日文庫)のpp171~172)
公使館を一人で騎馬で出発したウィルスであったが、おそらくジェンキンズが手配したならず者に相当する船員か腕利きの軍人か、3人が横浜から騎馬で合流したようだ。
宿場や行列に遭遇すると馬の速度を落として慎重に東海道を江戸方面へ進むウィルスの姿が浮かぶ。医療器具満載のカバンを肩にかけて、左手に拳銃をもっていた。
一方の敵、英国公使館から見ればかたき相手は大名行列であるが、まだ島津氏だとはわかっていない。島津の行列は700名だったから、普通車2台が離合するのが精いっぱいの狭い街道を道一杯に行列は西へ進んでいたはずだ。
薩摩藩士はさきほどリチャードソンの首をえぐり槍を突き刺してとどめを刺してきたばかりであり、こちらもまだ興奮状態である。
とても緊張した瞬間があの円弧上の道路橋の向こう側で起きていたのだった。

F100006770

写真1(再掲)生麦事件現場から横浜方面を撮影。円弧状の道路橋の向こう側は太平洋岸である。島津の行列とウィルスの騎馬群が危険なすれ違いをしているとき、温かい血を流したままにリチャードソンの死体はあの道路橋の下あたりに転がっていたはずだ。

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