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会津(27)続々「萱野権兵衛と息子郡長正」

萱野権兵衛は会津藩家老であるから、藩主松平容保の命を助ける意味で切腹したのだろう。
しかし、その次男である郡長正少年16歳の九州での自刃の理由がまだあいまいなままである。

「最後の会津武士」から郡長正の死のきっかけになったという母の手紙を見てみよう。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~daddy8/y/92/92k.htm

『母からの手紙
 戊辰戦争の責任を一身に背負って自害して果てた萱野権兵衛には、長正という14歳の息子がいました。

 長正は、萱野家がお家断絶とされたことから、萱野姓を名乗ることが許されず、母方の姓である「郡(こおり)」を名乗っていましたが、文武両道に秀でていたことから、7人の会津藩子弟とともに福岡県豊津町にあった小笠原藩の藩校育徳館に留学できることになりました。

 そして学問・武道に精進して一年余りが過ぎ、九州での暮らしにもなれた頃、長正は、故郷会津の母あてに次のような手紙を送りました。

 母上様へ

 会津組は他藩のものに遅れをとらず頑張っています。大変に恵まれた環境ではありますが、ひとつだけ不満なのは、食事の量が少ないことです。

 激しい稽古の後など、皆ふらふらです。家が近い者はいろいろともらってくることも出来ますが、我々はそうはいきません。梅干しやたくあんだけという食事もしばしばです。

 ひとつお願いがあります。会津の干し柿を送っていただけませんか?仲間も喜ぶものと思います。

明治4年3月 郡長正

 育ち盛りの長正にとって、食事の量が足りなく感じるというのは当然のことであったし、また、会津の“身知らず柿”は、現代では皇室への「献上柿」になっているほど美味しい会津の名産品、その味が恋しくなったのも無理はありません。

 しかし、この手紙に対する長正の母、タニからの返信は、意外な・・・そして大変手厳しいものでした。

 長正へ

 そなたは、藩から選ばれて学問させてもらえる大変幸せな身です。斗南へ行った人々の苦労を知っていますか?

 痩せた土地に鍬をふるい、血みどろになって働いても米粒一つ採れず、雑穀を粥にしてすする悲惨な生活をしていても、誰も不平不満を言わずに頑張っているのです。

 会津の武士の子であるそなたが、食物のことをあれこれ言い、柿を送ってくれとは見下げ果てた根性です。

 再びこのようなことを言ってよこすなら、そなたは萱野権兵衛の子ではありません。

同じく前掲の「最後の会津武士」より、

『会津藩の教育の根本をなしている『什の掟』と呼ばれる童子訓です。
 「什」とは地区を単位とした少年団のことであり、会津藩は、次代を担う青少年の教育に対して極めて熱心であり、家庭教育と子供達の遊びを非常に重要視し、特に、子供の「什」への加入は絶対的な義務であったようです。

 この『什の掟』は、次の七箇条からなっています。

一、年長者の言うことに背いてはなりませぬ
二、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ
三、嘘言を言うことはなりませぬ
四、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
五、弱い者をいじめてはなりませぬ
六、戸外で物を食べてはなりませぬ
七、戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ

 この、七番目の「戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ」は、現在では全く通用しないものですが、男の子を軟弱に育てたくないと言う考え方が根底にあったようです。
 そして、この七箇条のあとに、総括的な言葉として「ならぬことはならぬものです。」と記しています。

 言うまでもないことですが、「してならないことは、してはいけません」ということです。物質的に豊かな社会にあって、心の貧しさが叫ばれ、規範意識の低下が指摘される昨今、子どもたちを、この豊かさの中に埋没させず、物事の道理をしっかりと理解させ、道理に反することは許されないという姿勢を示すことこそ、今、家庭においても、学校においても、一番必要なことではないかと、最近特に感じているところです。

 「その国の未来を占うには、その国の青年を見よ」と申します。この国の未来を託すに足る青年たちを育てていこうと、今、私たちは本当に真剣に考えているのかどうか、自問する日々であります。
「ならぬことはならぬ」。

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